朝特有の僅かに肌寒い空気と心地よいベットの温もりに目を細めながら窓を見ればまだ陽も上がりきっていない頃――

もう少しだけと目を閉じた後にその幸せはノックの音で消されてしまった。
邪魔された仕返しと不貞腐れて返事をしなければ今度は名前を呼ばれて。



「起きているんだろう、

「・・・」



彼は私がいつも早起きなのを知っているのだ。





faivminit






「起きてません」

「ならどうして返事をしている」

きっと扉の前で頭を抱えているはずのバッシュを想像しながら、どうにか部屋に引きずりこもうと思案する。

「私を起こさず帰って皆に何言われても援護しませんから」

、何を―」

「ちゃんと起こしてくださいね」




それから何度名前を呼んでも返事をしない、ドアに鍵をかけずに完全に部屋の中に立てこもったのだ・・・。




「・・・はぁ・・」

一呼吸吐いた後、諦めてノブに手をかけ彼女の様子を探る。
は体を起こして嬉しそうに楽しそうにニコニコとこちらを向いてるではないか。



「起きているなら行くぞ」


素っ気無い態度で体を反したバッシュの後ろでボフッと、布特有の埋もれる音が大きく聞こえた。


「後で勝手に行きますからどうぞ」


もしかして機嫌を損ねてしまっただろうか?声もいささか冷たく語尾は強く言い切られてしまった。




「―・・・・?」



不安げな表情でベッドに近づけば彼女はクスクスと笑いながら両手を伸ばしてくる。


「バルフレアのご厚意に甘えないとダメよ」

「どうして分かった?」

「あなたが私を起こしに来る事はないし、もしあったとしても
さっきのようにノックをして終らせようとするでしょうね。」

「・・・・」

「口実があればこうやって甘える事が出来るもの。」


重なった手で互いの体を引き寄せ合い抱きしめ合う―


「おはよう、バッシュ」

「ああ、おはよう」

「じゃあ、その次は?」

愛嬌よく首をかしげてみせる彼女、困る事を知っているくせに分かってそう言ってくるのだ。

「前にも言っただろう、それは」

「お目覚めのキス」



「じゃあ、起きないから」

意地悪くいう口元に小さく唇を落とせば、満足したのかはバッシュの首筋に顔をうずめ猫の様に頬を寄せる。
触れる肌も流れ落ちる髪も愛おしくて額に軽くキスをかえした。
そして首に触れている彼女が何かを呟く。

「バッシュの匂いがする」

「?!」

そんな事を人に言われたのは初めてだった。
突然のことで恥ずかしくなりの肩を掴み離そうとするバッシュ。


「もうちょっと」

「ダメだ」

「急にどうしたの?」

立ち上がり逃げ出そうとするバッシュを抱きしめ、は自分ごとそのまま一緒に後ろへ倒れてゆく。



「!―ッ」


彼女を潰さないように何とか支えることができたが、それでもまだ近づけようと体を引っぱるのだ。



「あと5分だけ」

「・・」

「バッシュ」

そうやって名前を呼ぶ声やその表情にいつも敵わず許してしまう。
彼女は誘惑するものが多すぎはしないか―?
内心思っていると、それを見透かしたかのような一言を言われる。
しかし、それは俺に対してのであって、自分がまるで『いじめられている』というように。。。

「―・・ズルイわ」

「?」

「いつもそうやって私を弄ぶ」

「―何を言っている」

「バッシュの事よ。」

「いや、違うな」

「だってそうじゃない、今の私を例えるなら親から餌を貰おうとする雛鳥よ」

こうしてあなたの答えが返って来るのをいつも待ってる

「・・・」

「意味が分からない?」

「ああ」

肘を使い体を少し起こしてバッシュに近寄る。
逃げないように目で捉えて――-



「あなたの愛無しで生きていけないからよ」


もし私と想いが同じなら目覚めのキスをしてその後は5分間の抱擁で温めて―


今日もあなたに愛をさえずる為にそれはどうしても必要な事だから。


「一緒に寝ようか?」


「駄目だ」


起こしに来たのにそうなっては、本当の意味でバルフレアの策略に嵌ってしまう。
それを知っているくせに彼女はまた俺を誘惑してくる――優しい笑顔と優しい口付けで。